【管理栄養士国試】腸管出血性大腸菌O157|ベロ毒素・血便・HUS

腸管出血性大腸菌O157と、ベロ毒素・血便・HUSの注意点を紹介するイラスト 食中毒
1分でわかる要点
  • O157は腸管出血性大腸菌の代表的な血清型の一つで、腸管内でベロ毒素を作り出血性大腸炎を起こす
  • 感染しても症状が出ない人や軽症で終わる人もいる一方、症状がある人の一部(6〜7%)は数日〜2週間以内にHUS(溶血性尿毒症症候群)を発症することがある
  • 原因は牛肉などの食肉だけでなく、野菜・水・二次汚染された食品もあり、予防の中心は十分な加熱と器具・手指の分離

O157というと「牛肉を十分加熱すれば防げる菌」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし実際には、井戸水や生野菜、加熱後の食品への二次汚染など、原因は多岐にわたります。管理栄養士国家試験でも、O157と腸管出血性大腸菌の関係、ベロ毒素が症状を起こす仕組み、血便とHUSの関係がよく問われます。この記事では、O157に絞って原因食品・感染経路・症状の進み方・予防のポイントを整理します。食中毒全体の分類は食中毒の種類と原因菌一覧、細菌性食中毒の3分類は感染型・食品内毒素型・生体内毒素型の覚え方を確認してください。

O157食中毒の最重要ポイント

項目 国試向けの整理
菌の位置づけ 腸管出血性大腸菌(EHEC)の代表的な血清型。他にO26、O111等がある
症状を起こす原因 腸管内で増殖し産生するベロ毒素(志賀毒素に類似)
主な原因食品 加熱不十分な食肉、井戸水、生野菜、二次汚染された食品など
潜伏期間 多くの場合3〜8日
主な症状 激しい腹痛、頻回の水様便、著しい血便が出ることがある
重症合併症 症状のある人の6〜7%程度がHUS(溶血性尿毒症症候群)等を発症することがある
予防の中心 中心部75℃で1分間以上の加熱、手指・器具の分離、二次汚染の防止

O157と腸管出血性大腸菌の関係

大腸菌は本来、家畜や人の腸内に広く存在し、多くは無害です。しかし一部の大腸菌は下痢などの症状を起こし、「病原大腸菌」と呼ばれます。そのうち、毒素を産生して出血を伴う腸炎やHUSを起こすものが「腸管出血性大腸菌」です。腸管出血性大腸菌は菌の表面の抗原の違いでさらに分類され、代表的なものが「O157」で、他にO26、O111などの血清型も知られています。つまり、O157は腸管出血性大腸菌という大きな分類の中の一つの血清型であり、「O157=腸管出血性大腸菌のすべて」ではありません。大腸菌全体で見ても、危険なのはごく一部です。

ベロ毒素が症状を起こす仕組み

O157などの腸管出血性大腸菌は、食品や水を介して摂取された後、腸管内で増殖し、「ベロ毒素」と呼ばれる毒素を作り出します。ベロ毒素は赤痢菌が産生する志賀毒素と似た性質を持つ毒素で、腸管の細胞に作用して出血性大腸炎を引き起こし、体内に吸収されるとHUSなどの全身性の合併症の原因にもなります。ここで注意したいのは、ベロ毒素は食品の中であらかじめ作られているのではなく、菌を摂取した後、腸管内で増殖する過程で作られるという点です。食品内にすでにできた毒素を摂取して発症する黄色ブドウ球菌などの「食品内毒素型」とは仕組みが異なり、O157は生きた菌を摂取した後に体内で毒素を作る「生体内毒素型」に分類されます。

血便とHUSの関係

O157に感染した場合の経過には個人差があります。感染の機会があった人のうち、症状がまったく出ない人や軽い下痢だけで終わる人もいる一方、多くの場合はおおよそ3〜8日の潜伏期を経て頻回の水様便で発病し、その後激しい腹痛を伴って血便に進むことがあります。ただし、これは「感染すれば必ず血便になる」という意味ではなく、経過には幅があります。血便などの症状がある人のうち、6〜7%程度が、初発症状から数日から2週間以内(多くは5〜7日後)にHUSや脳症などの重い合併症を発症するとされています。つまり、血便が出た人の全員がHUSになるわけではなく、あくまで一部で起こる合併症です。

O157の感染源、潜伏期間3〜8日の目安、腹痛・下痢と、一部でHUSに至る経過を示す模式図
食品や水などを介して取り込まれた菌が腸管内で増殖し、産生するベロ毒素が腸管などに障害を引き起こします(食品中にあらかじめできた毒素を摂取する黄色ブドウ球菌などとは仕組みが異なります)。潜伏期間の3〜8日は農林水産省資料に基づく目安で、症状や経過には個人差があります。血便やHUSは全員に起こるわけではありませんが、小児や高齢者は重症化に注意が必要です。

HUSの三徴候

HUSとは「溶血性尿毒症症候群」の略称で、様々な原因で生じる血栓性の血管の障害によって急性の腎不全が起こる病態です。次の3つが特徴とされています。

  • 溶血性貧血:赤血球が壊れることで生じる貧血
  • 血小板減少:血液を固める血小板が減ること
  • 急性腎機能障害:腎臓のはたらきが急激に低下すること

初期には顔色不良、尿量の減少、むくみ、意識障害などがみられるとされています。HUSは子どもと高齢者に起こりやすいとされており、この年齢層では特に注意が必要ですが、これらの年齢層であっても必ず起こるわけではありません。

原因食品と感染経路

O157は牛などの反芻動物が保菌していることがあり、と畜・解体の過程で食肉が汚染される場合があります。国内の食中毒事例では、加熱不十分な牛肉やレバー、ハンバーグなどの食肉のほか、井戸水、貝割れ大根、キャベツ、メロン、白菜漬けなど、肉以外の食品からも原因食品として報告されています。また、感染した動物とのふれあいや、汚染された小動物との接触で感染した事例もあります。「O157は牛肉だけが原因」という理解は、こうした多様な感染経路を見落とすことになります。

肉以外からも感染する理由

野菜や水がO157の原因になるのは、家畜の糞便に汚染された土壌や水を介して、野菜の表面や井戸水に菌が付着・混入することがあるためです。また、加熱済みの食品であっても、生肉を扱ったまな板や包丁、手指を介して菌が付着する「二次汚染」が起これば、その食品を介して感染することがあります。「十分に加熱した食品を食べれば安全」という考え方は、加熱後に生じる二次汚染を見落としている点に注意が必要です。

人から人への感染と二次汚染

O157は、菌に汚染された飲食物を摂取するほか、感染者や、症状のない「無症状病原体保有者」の便で汚染されたものを口にすることでも感染することがあります。少ない菌量でも感染が成立するとされ、目安として100個程度の菌数でも感染するといわれています。ただし、職場や学校で会話をしたり、咳・くしゃみ、汗などを介して感染するものではなく、空気感染や単なる接触感染ではありません。あくまで、汚染された物や手指を介して口に入ることで感染する点を押さえておく必要があります。このため、感染症法上は三類感染症に位置づけられ、症状の有無にかかわらず、便の検査でベロ毒素産生菌が確認された間は、飲食物を扱う業務への就業が制限されます。

潜伏期間と症状

O157の潜伏期間は、多くの場合3〜8日とされています。症状は、頻回の水様便から始まり、激しい腹痛を伴って著しい血便に進むことがあります。発熱がみられることもありますが、多くは一過性です。乳幼児や高齢者では症状が重くなりやすいとされ、加熱が十分でない食肉などは食べさせないようにすることが望ましいとされています。下痢止め薬の中には、腸の動きを抑えることでベロ毒素の排出を妨げるおそれがあるものもあるとされており、自己判断で服用せず、血便などの症状があるときは医療機関の受診が推奨されています。

国試で混同しやすい菌との比較

比較 O157(腸管出血性大腸菌) サルモネラ カンピロバクター
分類 生体内毒素型 感染型 感染型
主な原因食品 牛肉、井戸水、野菜等 鶏卵、鶏肉、食肉 鶏肉が中心
潜伏期間 多くの場合3〜8日 通常8〜48時間 通常1〜7日
特徴的な合併症 HUS(一部) 菌血症等(乳児・高齢者) ギラン・バレー症候群(まれ)

詳しい原因菌ごとの潜伏期間の比較は食中毒の潜伏期間一覧、サルモネラの詳細はサルモネラ食中毒の記事もあわせてご覧ください。

加熱・手洗い・器具分離による予防

中心部までしっかり加熱する

腸管出血性大腸菌は、中心部の温度が75℃で1分間以上の加熱により死滅するとされています。ハンバーグなどのひき肉を使った食品や、内部まで加工処理された食肉は、中心部まで十分に加熱することが特に重要です。冷蔵や冷凍は菌の増殖を抑えるための温度管理であり、菌を死滅させる方法ではない点に注意してください。

生肉用の器具と、そのまま食べる食品用の器具を分ける

生肉を切ったまな板や包丁でそのまま食べる野菜を切ると、加熱後の食品や生野菜に菌が移り、二次汚染が起こります。まな板・包丁は生肉用とそれ以外で使い分けるか、使うたびに洗浄・消毒することが大切です。

手洗いと調理後の温度管理

調理前後やトイレの後は、石けんと流水で丁寧に手を洗います。調理を途中でやめる場合は室温に放置せず冷蔵庫に入れ、再加熱する際も十分に加熱します。

覚え方

O157は「大腸菌の中の腸管出血性大腸菌、その中の代表がO157」という位置づけと、「腸管内でベロ毒素を作る(生体内毒素型)」という仕組みをセットで覚えると整理しやすくなります。症状の進み方は「水様便→(一部で)血便→(さらに一部で)HUS」という分岐する流れであり、全員が同じ経過をたどるわけではない点も忘れずに押さえておきましょう。

管理栄養士国家試験の確認問題

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問題:O157と腸管出血性大腸菌の関係について、最も適切な記述はどれか。

  1. O157は腸管出血性大腸菌には含まれない、別の分類の菌である
  2. 腸管出血性大腸菌は、O157のみを指す名称である
  3. O157は、腸管出血性大腸菌の代表的な血清型の一つである
  4. O157は、毒素を産生しない病原性のない大腸菌である
  5. O157とサルモネラ属菌は、同じ分類に属する菌である

正解:3

正解理由:腸管出血性大腸菌は血清型によりO157・O26・O111等に分類され、O157はその代表的な一つです。

誤答理由:1はO157が腸管出血性大腸菌の代表的な血清型であることに反します。2は腸管出血性大腸菌にはO157以外にO26やO111等も含まれるため誤りです。4はO157がベロ毒素を産生する点に反します。5はサルモネラ属菌と大腸菌は異なる細菌です。

ひっかけポイント:「O157=腸管出血性大腸菌のすべて」ではなく、O157は代表的な血清型の一つにすぎない点に注意しましょう。

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問題:O157がベロ毒素を作る場所として最も適切なものはどれか。

  1. 感染した人の腸管内
  2. 加熱調理される前の食品の内部
  3. 冷蔵庫で保管された食品の表面
  4. 加熱調理中の鍋の中
  5. まな板などの調理器具の表面

正解:1

正解理由:O157は摂取された後、腸管内で増殖する過程でベロ毒素を作り出します。

誤答理由:2・3・4・5はいずれも食品や器具の表面や内部で、あらかじめ毒素が作られているという誤解に基づく選択肢です。

ひっかけポイント:食品内にすでにできた毒素を摂取して発症する食品内毒素型(黄色ブドウ球菌等)と混同しないようにしましょう。O157は生体内毒素型です。

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問題:HUS(溶血性尿毒症症候群)の三徴候として最も適切な組み合わせはどれか。

  1. 発熱・意識障害・脱水
  2. 下痢・血便・腹痛
  3. 白血球増多・CRP上昇・発熱
  4. 溶血性貧血・血小板減少・急性腎機能障害
  5. 黄疸・腹水・浮腫

正解:4

正解理由:HUSは溶血性貧血、血小板減少、急性腎機能障害の3つを特徴とする病態です。

誤答理由:1は初期症状の一部と重なりますが三徴候そのものではありません。2はO157感染症の消化器症状で、HUSの三徴候とは別のものです。3・5はHUSの三徴候として一般的に説明される項目ではありません。

ひっかけポイント:HUSを単なる「腎臓の病気」と捉えず、貧血・血小板減少・腎機能障害の3つがそろった病態であることを押さえましょう。

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問題:O157の原因食品に関する記述として最も適切なものはどれか。

  1. 生や加熱不十分な牛肉だけが原因食品である
  2. 野菜や井戸水が原因となることはない
  3. 加熱済みの食品は、その後の二次汚染を受けることはない
  4. O157は魚介類からのみ検出される菌である
  5. 国内の食中毒事例では、貝割れ大根やメロンなど、肉以外の食品も原因として報告されている

正解:5

正解理由:国内の食中毒事例では、牛肉などの食肉のほか、貝割れ大根、キャベツ、メロン、井戸水など、肉以外の食品や水も原因として報告されています。

誤答理由:1・2・4はいずれも原因食品を一部に限定しすぎた誤った説明です。3は加熱後の二次汚染の可能性を否定しており誤りです。

ひっかけポイント:「牛肉だけが原因」という思い込みで、野菜や水を介した感染経路を見落とさないようにしましょう。

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問題:O157の予防に関する記述として最も適切なものはどれか。

  1. 冷蔵保存すればO157は死滅する
  2. 食肉は中心部を75℃で1分間以上加熱することが目安とされている
  3. 少量の菌では感染が成立することはない
  4. 加熱後の食品を生肉用のまな板で扱っても問題はない
  5. HUSは感染者全員に必ず起こる合併症である

正解:2

正解理由:腸管出血性大腸菌は中心部75℃で1分間以上の加熱により死滅するとされています。

誤答理由:1は誤りで、冷蔵は増殖を抑える方法であり殺菌ではありません。3は誤りで、100個程度の菌数でも感染するとされています。4は誤りで、二次汚染の原因になります。5は誤りで、HUSは症状のある人の一部(6〜7%程度)に起こる合併症です。

ひっかけポイント:冷蔵・冷凍を「殺菌」と混同しないこと、少量の菌でも感染しうることを押さえましょう。

要点まとめ

今日の振り返り

  • O157は腸管出血性大腸菌の代表的な血清型で、腸管内でベロ毒素を作る生体内毒素型
  • 血便・HUSは一部で起こる合併症であり、全員に起こるわけではない
  • 原因食品は食肉だけでなく野菜・水・二次汚染も含まれ、予防の中心は加熱と器具の使い分け

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食中毒全体の分類は食中毒の種類と原因菌一覧、細菌性食中毒の3分類は感染型・食品内毒素型・生体内毒素型の覚え方、潜伏期間から原因を推定する方法は食中毒の潜伏期間一覧を確認してください。原因食品や仕組みを個別に比較したい場合は、サルモネラ食中毒、ノロウイルス、カンピロバクター食中毒もあわせてご覧ください。

参考文献・出典

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