【管理栄養士国試】小腸の構造と機能|十二指腸・空腸・回腸と消化吸収

小腸の構造と機能(十二指腸・空腸・回腸と消化吸収)を扱う記事のアイキャッチ 人体の構造と機能

小腸は「栄養素を吸収する場所」という一言だけでは、国試の正誤問題には対応できません。小腸は十二指腸・空腸・回腸という3つの部位からなり、それぞれで組織の細かい違いがあり、輪状ひだ・絨毛・微絨毛という3段階の構造で吸収面積を広げ、複数の種類の細胞と酵素・輸送体・ホルモンが連携して初めて、食べたものが体内に取り込まれます。この記事では、細胞・組織・器官・器官系の階層と胃腺の細胞・胃酸分泌の仕組みを踏まえ、小腸の部位から栄養素の吸収・ホルモンによる調節まで、「どこで・誰が・何を使って・何が起こるのか」を一続きの流れとして整理します。

  • 小腸は十二指腸→空腸→回腸の順に続き、部位ごとに組織学的な特徴(ブルンネル腺・パイエル板など)が異なる
  • 輪状ひだ・絨毛・微絨毛は同じ大きさの構造ではなく、粘膜下層レベル→粘膜レベル→細胞レベルという異なる階層の構造
  • 糖質・タンパク質・脂質は、異なる輸送体・異なる経路(血液またはリンパ)を使って吸収される

この記事で理解できること

  • 十二指腸・空腸・回腸の位置・役割の違いと、それぞれを見分ける組織学的な目印
  • 輪状ひだ・絨毛・微絨毛という3段階の構造による表面積拡大の仕組み
  • 小腸上皮を構成する細胞の種類と、糖質・タンパク質・脂質が消化・吸収される経路
  • 膵液・胆汁・胃排出を調節する消化管ホルモンの働きと、国試で混同しやすい組合せ

小腸の全体像

小腸は、胃の出口である幽門から、大腸へつながる回盲部まで続く管状の器官で、十二指腸・空腸・回腸の3つの部位からなります。十二指腸では、胆のうからの胆汁と膵臓からの膵液が、十二指腸乳頭(ファーター乳頭)を通じて流れ込み、消化液と食物が混ざり合います。空腸は小腸の中でも主要な栄養吸収の場となる部位で、輪状ひだ・絨毛が特によく発達しています。回腸は小腸の終わりの部分で、その末端(回腸末端)ではビタミンB12(内因子との複合体)や胆汁酸が吸収されます。ただし「特定の栄養素は1か所でしか吸収されない」という理解は正確ではなく、実際には「主に」「重要な部位として」という程度の局在があることに注意してください。

十二指腸・空腸・回腸の違い

3つの部位は連続していますが、組織学的にはっきりした違いがあり、国試ではこの違いが頻出します。

部位 組織学的な特徴 主な役割
十二指腸 粘膜下層に十二指腸腺(ブルンネル腺)がある。後腹膜に固定される部分では漿膜を欠き、外膜として周囲の組織へ続く 胆汁・膵液の流入、酸性内容物の中和
空腸 輪状ひだ・絨毛がよく発達する。ブルンネル腺・パイエル板はいずれも目立たない 糖質・タンパク質・脂質の主要な消化・吸収の場
回腸 集合リンパ小節であるパイエル板が発達する。輪状ひだは空腸に比べて目立たなくなっていく ビタミンB12・胆汁酸の吸収、免疫機能(M細胞による抗原取り込み)

ブルンネル腺を空腸や回腸の特徴として、あるいはパイエル板を十二指腸の代表的構造として覚えてしまう間違いが起こりやすいため、「ブルンネル腺=十二指腸」「パイエル板=回腸」という対応を軸に区別してください。

小腸壁の4層

小腸壁も、消化管に共通する基本パターンとして、内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜(または外膜)の4層構造です。固有筋層は、胃で見られた例外的な3層構造とは異なり、小腸では消化管本来の内輪走筋・外縦走筋の2層構造です。「胃の固有筋層は3層、小腸の固有筋層は2層」という対比は、国試で混同しやすいポイントとして押さえておいてください。漿膜については、空腸・回腸は基本的に漿膜で覆われますが、十二指腸は後腹膜に固定される部分があり、その面では漿膜を欠き、外膜(アドベンティシア)として周囲の組織へ続きます。

輪状ひだ・絨毛・微絨毛

小腸は、3段階の異なる構造を組み合わせることで、吸収に使える表面積を大きく広げています。この3つを同じ大きさの構造として説明しないことが重要です。

構造 構成するレベル 主な役割
輪状ひだ 粘膜と粘膜下層が作る大きなひだ(肉眼でも分かる大きさ) 管の内面積そのものを拡大する
絨毛 粘膜が指状に突き出た構造(輪状ひだの表面に多数存在) 吸収上皮細胞を配置する足場となり、表面積をさらに拡大する
微絨毛 吸収上皮細胞1個の頂端面にある微細な突起(絨毛の表面にさらに存在) 密集して刷子縁を形成し、消化・吸収の効率を高める

整理すると、輪状ひだの表面に絨毛が並び、絨毛を覆う吸収上皮細胞1個1個の表面にさらに微絨毛が密集する、という入れ子構造になっています。微絨毛が密集して見える部分をまとめて刷子縁と呼びます。

これに対して大腸には、小腸のような輪状ひだ・絨毛はなく、吸収上皮細胞の表面に微絨毛だけが存在します。この組織学的な違いについては、大腸の構造・小腸との組織学的な違いを確認するで扱っています。

絨毛内部の毛細血管と中心乳び管

1本1本の絨毛の表面は単層円柱上皮(吸収上皮細胞と杯細胞)で覆われ、内部の芯にあたる粘膜固有層には毛細血管と中心乳び管(リンパ管の一種)が通っています。吸収された栄養素は、この2つの経路のどちらかに入ります。

毛細血管(門脈へ)に入りやすいもの: 単糖、アミノ酸、水溶性ビタミン、多くの無機質。中心乳び管(リンパ管へ)に入るもの: 長鎖脂肪酸などから吸収上皮細胞内で再合成されたトリアシルグリセロールを含むカイロミクロン、脂溶性ビタミン。ただし「脂質はすべてリンパ管へ入る」という理解は正確ではなく、短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸よりも毛細血管側(門脈)へ吸収されやすい点が異なります(例外なく門脈だけを通るという意味ではありません)。

小腸陰窩と細胞

絨毛の間には、くぼんだ小腸陰窩(リーベルキューン腺)があり、複数の種類の細胞が特定の位置に配置されています。

細胞名 主な位置 分泌物・働き 国試で間違えやすい点
吸収上皮細胞 絨毛表面が中心 刷子縁酵素による消化、栄養素の吸収 微絨毛(刷子縁)を持つのはこの細胞
杯細胞 絨毛・陰窩全体 粘液分泌による保護 胃の副細胞(粘液頸部細胞)と役割が似ているため混同しやすい
パネート細胞 陰窩の底部 リゾチームや抗菌ペプチドなどを分泌し、自然免疫に関与 陰窩底部にあるのは主細胞ではなくパネート細胞(小腸特有)
腸内分泌細胞 陰窩・絨毛に散在 セクレチン・コレシストキニンなど消化管ホルモンを分泌 細胞名がホルモン名と直結しないため、後述の表と対応させて覚える
幹細胞 陰窩の底部付近 分裂・分化し、他のすべての上皮細胞を供給する パネート細胞と混同しやすいが、幹細胞自体は分泌を主な役割としない
M細胞 パイエル板を覆う濾胞関連上皮(陰窩の一般的な構成細胞ではない) 抗原を取り込み、免疫細胞へ受け渡す モチリンを分泌する内分泌細胞(本記事ではMo細胞と表記)とは全くの別物。M細胞は抗原提示に関わる上皮細胞である
輪状ひだ・絨毛・微絨毛の階層構造と、絨毛内部の毛細血管・中心乳び管、陰窩のパネート細胞・幹細胞の配置を示す図
輪状ひだ→絨毛→微絨毛という3段階の拡大構造と、絨毛内部の毛細血管(赤)・中心乳び管(緑)の区別、陰窩底部のパネート細胞・幹細胞の位置を示す図。栄養国試.com作成(参考:OpenStax “Anatomy and Physiology 2e,” 23.5 The Small and Large Intestines)

十二指腸腺とパイエル板

先に触れた十二指腸腺(ブルンネル腺)とパイエル板は、部位を見分ける重要な手がかりです。十二指腸腺は粘膜下層に存在し、アルカリ性の粘液を分泌します。胃から流入した酸性の内容物から粘膜を守るとともに、膵液中の重炭酸イオンと合わせて、消化酵素が働きやすい環境(中性に近いpH)へ近づける役割があります。一方パイエル板は回腸で発達する集合リンパ小節で、免疫機能に関係し、その表面を覆う濾胞関連上皮にM細胞が存在して抗原の取り込みに関わります。

糖質の消化・吸収

デンプンは、まず膵臓から分泌される膵アミラーゼによってオリゴ糖・二糖類に分解されます。次に、吸収上皮細胞の刷子縁にある酵素(マルターゼ・スクラーゼ・イソマルターゼ・ラクターゼなど)によって、最終的に単糖(グルコース・ガラクトース・フルクトース)にまで分解されます。吸収においては、グルコースとガラクトースは細胞の頂端膜にあるSGLT1によってナトリウムイオンと共に細胞内へ取り込まれ、フルクトースはGLUT5によって細胞内へ入ります。細胞内に入った単糖は、基底膜側にあるGLUT2を通って血液(毛細血管→門脈→肝臓)へ移動します。国試で扱う基本的な吸収モデルでは、GLUT2は吸収上皮細胞の基底膜側から単糖を血液側へ運びます。高濃度の管腔内グルコース条件では刷子縁膜側にも現れることが報告されていますが、まずは基本配置を押さえてください。この一連の輸送は、Na⁺/K⁺-ATPaseが細胞外へナトリウムイオンをくみ出し続けることで生まれるナトリウム濃度勾配に支えられています。SGLT1・GLUT5・GLUT2は、それぞれ担当する糖の種類と存在する膜(頂端膜か基底膜か)が異なるため、入れ替えて覚えないようにしてください。

タンパク質の消化・吸収

胃でペプシンによる消化を受けたタンパク質は、十二指腸で膵臓由来のタンパク質分解酵素の作用を受け、オリゴペプチド・ジペプチド・トリペプチド・アミノ酸にまで分解されます。ここで重要なのが酵素の活性化順序です。膵臓は不活性なトリプシノーゲンを分泌し、これが十二指腸の刷子縁にあるエンテロペプチダーゼ(旧称:エンテロキナーゼ)によって活性型のトリプシンへ変えられます。生じたトリプシンは、他の膵タンパク質分解酵素の前駆体も次々に活性化していきます。吸収の段階では、アミノ酸は複数のアミノ酸輸送体によって、ジペプチド・トリペプチドは水素イオンの濃度勾配を利用するPepT1(ナトリウムではなく水素イオンを利用する点に注意)によって細胞内へ取り込まれます。細胞内に入ったジペプチド・トリペプチドはさらに分解され、最終的に主にアミノ酸として血液(門脈→肝臓)へ移行します。

脂質の消化・吸収

脂質はまず胆汁酸によって乳化されますが、胆汁酸自体は消化酵素ではなく、脂肪の粒を細かくし、後述するミセルの形成を助ける物質です。実際に脂肪を分解するのは膵リパーゼで、補助因子であるコリパーゼとともに働き、トリアシルグリセロールを脂肪酸・2-モノアシルグリセロールなどに分解します。これらは胆汁酸と結びついて混合ミセルを作り、吸収上皮細胞まで運ばれて吸収されます。吸収上皮細胞の中では、脂肪酸などが再びトリアシルグリセロールへ再合成され、たんぱく質と結合してカイロミクロンが作られ、中心乳び管からリンパ管、最終的に血液循環へ入ります。ここで注意したいのが、長鎖脂肪酸は主にこの経路(再合成・カイロミクロン形成・リンパ管)をたどるのに対し、中鎖脂肪酸・短鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸よりも門脈血へ入りやすいという違いです(すべての中鎖・短鎖脂肪酸が例外なく門脈だけを通るという意味ではありません)。糖質・タンパク質が主に門脈を経由するのに対し、脂質(長鎖脂肪酸)は主にリンパ管を経由して肝臓を通らずに血液循環へ入るという経路の違いも、国試で問われやすいポイントです。

糖質・タンパク質・脂質それぞれの消化酵素・輸送体による吸収経路と、門脈またはリンパ管へ入る経路の違いを示す図
糖質はSGLT1・GLUT5(管腔側)とGLUT2(基本モデルでは基底側)を経て毛細血管・門脈へ、タンパク質はエンテロペプチダーゼによるトリプシン活性化とPepT1等を経て毛細血管・門脈へ、長鎖脂肪酸由来の脂質はカイロミクロンとして中心乳び管・リンパ管へ入る主な経路を示す図(短鎖・中鎖脂肪酸は門脈側へ入りやすい)。栄養国試.com作成(参考:OpenStax “Anatomy and Physiology 2e,” 23.7 Chemical Digestion and Absorption: A Closer Look、Koepsell H. “Glucose transporters in the small intestine in health and disease”、Killer M, et al. “Structural snapshots of human PepT1 and PepT2 reveal mechanistic insights into substrate and drug transport across epithelial membranes”)

ビタミン・無機質・胆汁酸の吸収

ここまでの流れを踏まえ、代表的な栄養素の吸収部位を整理します。いずれも「主に」「重要な部位として」という程度の局在であり、「その部位以外では一切吸収されない」という意味ではありません。

栄養素等 主な吸収部位 備考
鉄 主に十二指腸 能動的な取り込み機構が関与
カルシウム 十二指腸〜空腸上部が重要 この範囲での能動輸送が特に重要
葉酸 主に小腸上部 十二指腸・空腸が中心
ビタミンB12(内因子複合体) 回腸末端 胃の壁細胞が分泌した内因子と結合したビタミンB12が、回腸末端で吸収される
胆汁酸 主に回腸末端 肝臓へ戻る腸肝循環の一部
脂溶性ビタミン 脂質とともにミセル形成・吸収 脂質の吸収経路に準じる
水溶性ビタミン 小腸粘膜から血液側へ 多くは門脈を経由

消化管ホルモン

小腸の腸内分泌細胞は、複数の消化管ホルモンを分泌し、膵液・胆汁・胃の運動を調節しています。

ホルモン 分泌細胞・主な分布 主な刺激 標的・主な作用 入れ替えられやすい点
セクレチン S細胞(十二指腸中心) 酸性の内容物 膵管細胞(重炭酸イオンに富む膵液分泌)。胃酸分泌・胃排出を抑制 「重炭酸イオンの分泌を促す」のはセクレチン、「消化酵素の分泌を促す」のはCCKと混同しやすい
コレシストキニン(CCK) I細胞(十二指腸・空腸) 脂肪酸・アミノ酸 膵腺房細胞(消化酵素に富む膵液分泌)、胆のう収縮、オッディ括約筋を弛緩。胃排出を遅らせる オッディ括約筋を「収縮」ではなく「弛緩」させる点を取り違えやすい
GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド) K細胞(十二指腸・空腸) 経口摂取した糖質・脂質 血糖依存的なインスリン分泌を促進(インクレチンの一つ) 旧称「胃抑制ポリペプチド」と現在の標準的名称「グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド」を混同しやすい
GLP-1 L細胞(回腸・大腸に多い) 糖質・脂質の摂取 血糖依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃排出を遅延(インクレチンの一つ) GIPとの分泌部位・作用の違い(GLP-1はグルカゴン抑制作用も持つ)を混同しやすい
セクレチン・CCK・GIP・GLP-1の分泌細胞・分泌刺激・標的器官・主な作用を比較する図
セクレチン・CCK・GIP・GLP-1について、分泌細胞、主な分泌部位、刺激および作用を比較した図。セクレチンは重炭酸イオンに富む膵液分泌、CCKは膵消化酵素分泌・胆のう収縮・オッディ括約筋弛緩、GIPとGLP-1は血糖依存的なインスリン分泌促進に関係する。栄養国試.com作成(参考:Parikh A, Thevenin C. “Physiology, Gastrointestinal Hormonal Control”、“Regulation of Whole-Organ Pancreatic Secretion”)

小腸の運動

小腸は、内容物を消化液と混ぜ合わせる分節運動と、内容物を先へ送る蠕動運動という2種類の運動を、自律神経と腸管神経系の調節のもとで行っています。空腹時には、これとは別に周期的な強い収縮(空腹期収縮)が起こり、これにはモチリンというホルモンが関わっています。モチリンを分泌する内分泌細胞は、パイエル板を覆うM細胞(抗原を取り込む上皮細胞)とは全く別の細胞です。この呼び方はすべての教科書で統一されているわけではありませんが、本記事では両者の混同を避けるため、モチリンを分泌する細胞を「Mo細胞」と表記します。

国試で間違えやすい組合せ

組合せ 整理のポイント
ブルンネル腺/十二指腸 粘膜下層にある腺は十二指腸の目印
パイエル板/回腸 集合リンパ小節が発達するのは回腸
胃の固有筋層(3層)/小腸の固有筋層(2層) 3層構造は胃だけの例外
輪状ひだ・絨毛・微絨毛 粘膜下層レベル・粘膜レベル・細胞レベルという別の階層
長鎖脂肪酸(リンパ管)/中鎖・短鎖脂肪酸(門脈) 脂質でも吸収後の経路は鎖長で異なる
SGLT1(Na⁺依存)/GLUT5(フルクトース)/GLUT2(基底膜側) 糖の種類と存在する膜の組合せを区別する
PepT1(H⁺勾配利用) アミノ酸輸送体の多くはNa⁺依存だが、PepT1はH⁺を利用する
エンテロペプチダーゼ(旧称エンテロキナーゼ) トリプシノーゲンを活性化する刷子縁酵素
セクレチン(重炭酸イオン)/CCK(消化酵素・胆のう収縮) どちらも十二指腸由来だが作用が異なる
GIP/GLP-1 ともにインクレチンだが分泌部位・付随作用が異なる
M細胞(抗原取り込み)/Mo細胞(モチリン分泌) 名称が似ているが全く別の細胞
ビタミンB12・胆汁酸(回腸末端) 吸収部位が重なる代表的な組合せ

確認問題

問1

十二指腸・空腸・回腸に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。

  1. パイエル板は十二指腸に特徴的な構造であり、空腸・回腸には見られない。
  2. 十二指腸腺(ブルンネル腺)は粘膜下層に存在し、アルカリ性の粘液を分泌する。
  3. 空腸は、小腸の中で最も遠位(大腸に近い側)に位置する部位である。
  4. 回腸の固有筋層は、胃と同じく3層構造になっている。
  5. 十二指腸は全体が漿膜で覆われており、外膜(アドベンティシア)で覆われる部分はない。
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正解: ② 十二指腸腺(ブルンネル腺)は粘膜下層に存在し、アルカリ性の粘液を分泌する。

正解の理由: 十二指腸腺(ブルンネル腺)は十二指腸の粘膜下層に存在し、アルカリ性の粘液を分泌して胃からの酸性内容物を中和する働きを持つという記述が正しい理解です。

誤答が誤りである理由:

  • ① パイエル板が発達するのは十二指腸ではなく回腸です。
  • ② 正解。
  • ③ 空腸は十二指腸と回腸の間に位置し、回腸より肛門側ではありません。
  • ④ 小腸の固有筋層は胃とは異なり2層(内輪走筋・外縦走筋)です。
  • ⑤ 十二指腸の一部は後腹膜に固定されており、その面は漿膜ではなく外膜で覆われます。

ひっかけのポイント: 部位を特徴づける構造(ブルンネル腺・パイエル板)の対応関係と、胃との固有筋層の層数を入れ替えるひっかけです。

問2

絨毛・微絨毛・中心乳び管に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。

  1. 微絨毛は、絨毛と同じ大きさの構造で、両者は同義語として扱われる。
  2. 中心乳び管は絨毛の芯にあるリンパ管で、長鎖脂肪酸から再合成されたトリアシルグリセロールを含むカイロミクロンなどが入る。
  3. 単糖やアミノ酸は、主に中心乳び管を通って吸収される。
  4. 短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸も、長鎖脂肪酸と同様に必ずカイロミクロンとして中心乳び管へ入る。
  5. 微絨毛は絨毛の内部(粘膜固有層)に存在する構造である。
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正解: ② 中心乳び管は絨毛の芯にあるリンパ管で、長鎖脂肪酸から再合成されたトリアシルグリセロールを含むカイロミクロンなどが入る。

正解の理由: 中心乳び管は絨毛内部のリンパ管で、長鎖脂肪酸由来のトリアシルグリセロールを含むカイロミクロンや脂溶性ビタミンが入るという記述が正しい理解です。

誤答が誤りである理由:

  • ① 微絨毛は吸収上皮細胞1個の頂端面にある微細な構造で、絨毛(粘膜が指状に突出した構造)とは異なる大きさの階層です。
  • ② 正解。
  • ③ 単糖・アミノ酸は主に毛細血管(門脈側)へ入ります。
  • ④ 短鎖・中鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸よりも血液側(門脈)へ吸収されやすく、必ずカイロミクロンとして中心乳び管へ入るわけではありません。
  • ⑤ 微絨毛は絨毛の内部ではなく、吸収上皮細胞の頂端面(表面)に存在します。

ひっかけのポイント: 構造の大きさの階層(絨毛と微絨毛)、吸収後の経路(血液とリンパ)を入れ替えるひっかけです。

問3

糖質・タンパク質・脂質の吸収経路に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。

  1. フルクトースは、グルコースと同じくSGLT1によって吸収上皮細胞内へ取り込まれる。
  2. PepT1は、ナトリウムイオンの濃度勾配を利用してジペプチド・トリペプチドを輸送する。
  3. GLUT2は吸収上皮細胞の頂端膜に存在し、グルコースを細胞内へ取り込む輸送体である。
  4. エンテロペプチダーゼは、十二指腸の刷子縁に存在し、トリプシノーゲンをトリプシンへ活性化する酵素である。
  5. 胆汁酸は、脂肪を分解する消化酵素の一種である。
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正解: ④ エンテロペプチダーゼは、十二指腸の刷子縁に存在し、トリプシノーゲンをトリプシンへ活性化する酵素である。

正解の理由: エンテロペプチダーゼ(旧称エンテロキナーゼ)は十二指腸の刷子縁に存在し、膵臓由来の不活性なトリプシノーゲンを活性型のトリプシンへ変える酵素であるという記述が正しい理解です。

誤答が誤りである理由:

  • ① フルクトースはSGLT1ではなくGLUT5によって取り込まれます。
  • ② PepT1が利用するのはナトリウムではなく水素イオンの濃度勾配です。
  • ③ GLUT2は頂端膜ではなく基底膜側に存在し、細胞内から血液側へ単糖を運び出す輸送体です。
  • ④ 正解。
  • ⑤ 胆汁酸は消化酵素ではなく、脂肪を乳化しミセル形成を助ける物質です。

ひっかけのポイント: 輸送体が存在する膜の位置(頂端膜と基底膜)、利用するイオンの種類(Na⁺とH⁺)を入れ替えるひっかけです。

問4

消化管ホルモンに関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。

  1. セクレチンはI細胞から分泌され、胆のうを収縮させる。
  2. コレシストキニン(CCK)は、オッディ括約筋を収縮させることで胆汁の十二指腸への排出を促す。
  3. GIPは、旧称を「グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド」といい、現在は「胃抑制ポリペプチド」と呼ばれる。
  4. GLP-1は主に回腸・大腸のL細胞から分泌され、血糖依存的なインスリン分泌を促進するインクレチンの一つである。
  5. セクレチンとCCKは、どちらも脂肪酸・アミノ酸を主な分泌刺激とする。
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正解: ④ GLP-1は主に回腸・大腸のL細胞から分泌され、血糖依存的なインスリン分泌を促進するインクレチンの一つである。

正解の理由: GLP-1は回腸・大腸に多いL細胞から分泌され、血糖値に応じてインスリン分泌を促すインクレチンの一つであるという記述が正しい理解です。

誤答が誤りである理由:

  • ① セクレチンを分泌するのはI細胞ではなくS細胞で、胆のう収縮はCCKの作用です。
  • ② CCKはオッディ括約筋を収縮ではなく弛緩させることで、胆汁の排出を促します。
  • ③ 名称が逆です。旧称が「胃抑制ポリペプチド(gastric inhibitory polypeptide)」、現在の標準的名称が「グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)」です。
  • ④ 正解。
  • ⑤ セクレチンの主な刺激は酸性の内容物であり、脂肪酸・アミノ酸を主な刺激とするのはCCKです。

ひっかけのポイント: 分泌細胞・分泌刺激・標的器官への作用(収縮か弛緩か)、新旧の名称を入れ替えるひっかけです。

問5

ビタミンB12・胆汁酸・鉄などの吸収部位に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。

  1. ビタミンB12は、胃の壁細胞が分泌した内因子と複合体を形成し、回腸末端で吸収される。
  2. 鉄は、主に回腸末端で吸収される。
  3. 胆汁酸は、主に十二指腸で再吸収され、腸肝循環には関与しない。
  4. カルシウムは、小腸のどの部位でも全く同じ効率で吸収される。
  5. ビタミンB12は、内因子と結合しなくても回腸末端で問題なく吸収される。
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正解: ① ビタミンB12は、胃の壁細胞が分泌した内因子と複合体を形成し、回腸末端で吸収される。

正解の理由: 壁細胞から分泌された内因子とビタミンB12が複合体を作り、回腸末端で吸収されるという流れが正しい記述です。

誤答が誤りである理由:

  • ① 正解。
  • ② 鉄が主に吸収されるのは十二指腸です。
  • ③ 胆汁酸は主に回腸末端で再吸収され、肝臓へ戻る腸肝循環の一部を構成します。
  • ④ カルシウムは十二指腸〜空腸上部での能動輸送が特に重要とされ、部位による違いがあります。
  • ⑤ 内因子と結合しないビタミンB12は、回腸末端での効率的な吸収が損なわれます。

ひっかけのポイント: 吸収部位(十二指腸と回腸末端)、内因子とビタミンB12の結合の必要性を入れ替える・省略するひっかけです。

要点まとめ

  • 小腸は十二指腸→空腸→回腸の順に続き、ブルンネル腺(十二指腸)・パイエル板(回腸)という組織学的な目印で区別できる
  • 輪状ひだ・絨毛・微絨毛は粘膜下層・粘膜・細胞という異なる階層の構造で、これらが重なり合って吸収面積を広げている
  • 糖質・タンパク質は門脈を経由して肝臓へ、長鎖脂肪酸はリンパ管を経由して血液循環へ入るという経路の違いがある。門脈を経て運ばれた後の肝臓の構造・門脈・胆汁の流れを確認するで、その先の仕組みを扱っている
  • セクレチン・CCK・GIP・GLP-1はいずれも小腸から分泌されるが、分泌細胞・刺激・標的・作用がそれぞれ異なる
  • 糖質・タンパク質・脂質それぞれの消化吸収の詳しい輸送体や、消化管ホルモンのより詳細な比較については、今後の個別記事で扱う

参考文献・出典

  • 厚生労働省「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定検討会報告書」(令和4年度改定)大項目10「消化器系」A「消化器系の構造と機能」(消化管の構造と機能・消化管ホルモン・消化吸収が出題範囲に含まれることの根拠として使用。細胞配置・酵素反応・輸送体・ホルモン作用そのものの直接的な根拠としては使用していない)
  • OpenStax. “Anatomy and Physiology 2e,” 23.5 The Small and Large Intestines.(小腸が十二指腸・空腸・回腸に分かれること、小腸壁の基本的な層構造、輪状ひだ・絨毛・微絨毛の違い、絨毛内の毛細血管と中心乳び管、十二指腸腺・パネート細胞・パイエル板などの基本事項の根拠として使用。空腸・回腸間の壁の厚さ・血管分布・輪状ひだの発達度合いを比較する記述の根拠としては使用していない)
  • OpenStax. “Anatomy and Physiology 2e,” 23.7 Chemical Digestion and Absorption: A Closer Look.(糖質・タンパク質・脂質の消化吸収の概要、エンテロペプチダーゼによるトリプシノーゲンの活性化、単糖・アミノ酸が絨毛内の毛細血管へ吸収されること、長鎖脂肪酸由来の脂質がカイロミクロンとして中心乳び管へ入ること、短鎖脂肪酸が門脈系へ入りやすいこと、ビタミンB12・胆汁酸が主に回腸末端で吸収されることの根拠として使用)
  • Koepsell H. “Glucose transporters in the small intestine in health and disease.” Pflügers Archiv. 2020;472(9):1207-1248.(SGLT1がグルコース・ガラクトースを、GLUT5がフルクトースをそれぞれ刷子縁膜側で吸収すること、GLUT2が基本モデルでは基底膜側から血液側への単糖輸送を担うこと、Na⁺/K⁺-ATPaseが基底膜側でNa⁺勾配を形成することの根拠として使用)
  • Killer M, Wald J, Pieprzyk J, Marlovits TC, Löw C. “Structural snapshots of human PepT1 and PepT2 reveal mechanistic insights into substrate and drug transport across epithelial membranes.” Science Advances. 2021.(PepT1が小腸上皮細胞の管腔側膜に存在し、ジペプチド・トリペプチドをH⁺勾配を利用した二次性能動輸送で運ぶことの根拠として使用)
  • Parikh A, Thevenin C. “Physiology, Gastrointestinal Hormonal Control.” StatPearls.(セクレチンがS細胞から十二指腸で酸性内容物を刺激として分泌されること、CCKがI細胞から十二指腸・空腸で脂肪・タンパク質の消化産物を刺激として分泌されること、GIPがK細胞から十二指腸・空腸で栄養素を刺激として分泌されること、GLP-1がL細胞から糖・脂質を刺激として分泌されること、モチリンを分泌する細胞(Mo細胞)がパイエル板のM細胞とは別であることの根拠として使用)
  • “Regulation of Whole-Organ Pancreatic Secretion.” The Exocrine Pancreas, NCBI Bookshelf.(十二指腸内の酸によるS細胞からのセクレチン分泌と膵管細胞からの重炭酸イオン分泌、I細胞から分泌されるCCKによる膵消化酵素分泌・胆のう収縮・胃排出遅延・胆汁と膵液の流入部の括約筋弛緩の根拠として使用)
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