胃は、単に「食べ物をためる袋」ではありません。胃壁を作る4層の組織、その中に並ぶ複数の種類の細胞、そしてそれぞれの細胞が分泌するホルモン・酵素・塩酸が連携することで、消化と防御という2つの役割を同時に果たしています。この記事では、細胞・組織・器官・器官系の基本で学んだ階層を、胃という具体的な器官に当てはめながら、「どこから何が分泌され、どこへ作用し、最終的に何が起こるのか」を一続きで整理します。
- 胃壁は粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜の4層。固有筋層だけは輪走筋・縦走筋に加えて内側に斜走筋を持つ3層構造
- 胃酸分泌はガストリン・ヒスタミン・アセチルコリンが壁細胞を促進し、ソマトスタチンが抑制する、複数経路のバランスで調節される
- 壁細胞からの内因子分泌が低下すると、回腸末端でのビタミンB12吸収が低下し、巨赤芽球性貧血につながる
この記事で理解できること
- 胃の位置・肉眼的構造と、胃壁を構成する4層(固有筋層は例外的に3層)の役割
- 胃腺の種類と分布、胃粘膜に並ぶ細胞の種類・分泌物・働きの対応関係
- ペプシノーゲンからペプシンへの活性化、胃酸分泌を促進・抑制する経路、H⁺/K⁺-ATPaseの役割
- 胃粘膜を守る防御機構と、内因子・ビタミンB12・貧血の関係
胃の位置と肉眼的構造
胃は、食道と十二指腸の間に位置する消化管の一部です。食道からの入口を噴門、十二指腸への出口を幽門と呼びます。噴門から続く上部のふくらみを胃底部、胃の中央を占める最も広い部分を胃体部、幽門の手前で管状に狭くなる部分を幽門前庭部と呼びます。胃の右側の短い縁を小弯、左側の長く膨らんだ縁を大弯と呼び、外科手術や画像検査でも位置の目印として使われます。管理栄養士国家試験で問われる範囲はここまでで十分であり、周囲臓器との詳しい位置関係など臨床解剖に必要以上に踏み込む必要はありません。
胃壁の4層構造(固有筋層は例外的に3層)
胃壁は、消化管に共通する基本パターンとして、内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜の4層からなります。
| 層 | 主な組織 | 役割 |
|---|---|---|
| 粘膜 | 上皮組織+結合組織(粘膜固有層)+平滑筋(粘膜筋板) | 胃腺による分泌、胃酸への耐性 |
| 粘膜下層 | 結合組織 | 血管・神経が通り、粘膜を支える |
| 固有筋層 | 平滑筋(筋組織) | 収縮して内容物を混ぜ、十二指腸へ送る |
| 漿膜 | 結合組織+上皮組織(中皮) | 胃の表面を覆い、他の臓器との摩擦を減らす |
ここで国試上とくに重要なのが固有筋層です。食道や腸など消化管の多くの部分では、固有筋層は内側の輪走筋・外側の縦走筋という2層構造ですが、胃の固有筋層だけは、内側から斜走筋・輪走筋・縦走筋という3層構造になっています。誤解しやすい点として、「胃壁全体が3層」なのではなく、胃壁は4層のままで、そのうちの固有筋層という1つの層の内部が3層に分かれているという点に注意してください。この余分な斜走筋があることで、胃は他の消化管よりも複雑な収縮運動ができ、食べ物を胃液としっかり混ぜて粥状(かゆじょう)にすることができます。3層のうち輪走筋が最も発達しており、幽門部では幽門括約筋として働きます。
胃腺の種類と分布
胃の粘膜には、部位によって性質の異なる胃腺が分布しています。
| 胃腺 | 主な分布部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 噴門腺 | 噴門付近のごく狭い範囲 | 粘液を分泌する腺が中心 |
| 胃底腺 | 胃底部から胃体部にかけて広く分布(胃全体の中で最も広い範囲を占める) | 主細胞・壁細胞・副細胞(粘液頸部細胞)など複数の細胞を含む、消化液分泌の中心となる腺 |
| 幽門腺 | 幽門前庭部 | G細胞を含み、粘液分泌に加えて内分泌機能を持つ |
注意したいのは、胃底腺という名前から「胃底部だけにある腺」と誤解しやすい点です。実際には胃底腺は胃底部だけでなく胃体部にも広く存在し、消化酵素・塩酸・粘液の分泌を担う胃の主要な腺になっています。
胃粘膜を構成する細胞
1つの器官が単一の細胞だけでできていることはほとんどなく、胃の粘膜にも複数の種類の細胞が、それぞれ異なる分泌物・役割を持って配置されています。表層から胃腺の奥(底部)に向かって、細胞の種類が変化していく点も押さえておきましょう。
| 細胞名 | 主な存在部位 | 分泌物 | 主な働き | 国試で間違えやすい点 |
|---|---|---|---|---|
| 表層粘液細胞 | 胃粘膜の表面・胃小窩 | 粘液 | 胃酸・ペプシンから表面を保護 | 「胃腺の中の細胞」と混同しやすいが、胃腺の入口より浅い表面に位置する |
| 副細胞(粘液頸部細胞) | 胃底腺の頸部 | 粘液 | 頸部粘液を分泌し、幹細胞的な性質も持つ | 「副細胞」と「粘液頸部細胞」は資料によって呼び方が異なるが同じ細胞を指す同義語として扱われる |
| 主細胞 | 胃底腺の底部 | ペプシノーゲン | タンパク質分解酵素の前駆体を分泌 | 主細胞が分泌するのは酵素そのもの(ペプシン)ではなく不活性な前駆体(ペプシノーゲン)である点 |
| 壁細胞 | 胃底腺の頸部〜体部 | 塩酸(HCl)、内因子 | 胃酸分泌とビタミンB12吸収に必要な内因子の供給 | 壁細胞は酵素ではなく塩酸というイオンを分泌する細胞である点。内因子も同時に分泌する点を見落としやすい |
| G細胞 | 幽門腺(幽門前庭部) | ガストリン | 血液を介して壁細胞・ECL細胞を刺激する内分泌細胞 | G細胞自体は胃底部ではなく幽門前庭部にあるのに、作用する相手(壁細胞)は胃底部〜体部にあるという「分泌場所と作用場所のずれ」 |
| ECL細胞 | 胃底腺 | ヒスタミン | ガストリンの刺激を受け、壁細胞のH2受容体を介して胃酸分泌を増強 | ヒスタミンというとアレルギー反応を連想しやすいが、ここでは胃酸分泌を促す生理的な役割を持つ点 |
| D細胞 | 幽門前庭部に多いが、胃体部を含む胃内にも分布 | ソマトスタチン | G細胞からのガストリン分泌を抑え、胃酸分泌を抑制方向へ働かせる | 促進系の細胞(G細胞・ECL細胞・壁細胞)と役割が逆であり抑制系であることを混同しやすい。また「幽門部だけに存在する」と誤解しやすい |

ペプシノーゲンとペプシン
主細胞は、タンパク質分解酵素そのものではなく、ペプシノーゲンという不活性な前駆体を分泌します。ペプシノーゲンは、胃内の酸性環境(胃酸)によって一部が切り離され、活性型のペプシンに変化します。生じたペプシンが周囲のペプシノーゲンをさらにペプシンへ変える自己触媒的な反応も起こり、酸性環境の中で急速にペプシンの量が増えていきます。活性化したペプシンは、タンパク質のペプチド結合を加水分解し、タンパク質をより小さなペプチドへ分解します。
ここで整理しておきたいのが用語の混同です。ペプシノーゲンは不活性な前駆体、ペプシンは活性型の酵素、塩酸は酵素ではなく胃酸そのもの、ガストリンは酵素ではなくホルモンです。ペプシンが最もよく働く至適pHについては、資料によって「pH2付近」「pH4以上で急激に働きが弱まる」など数値の幅があり、単一の断定的な数値として覚えるより、「強い酸性環境でよく働き、中性に近づくと働きが弱まる酵素」として理解しておくのが安全です。
胃酸分泌の調節ー促進する経路と抑制する経路
壁細胞からの胃酸分泌は、複数の経路が同時に働くことで調節されています。促進する経路が複数あることと、それを抑える経路が別に存在することの両方を押さえてください。
促進経路(1) ガストリン経路(直接作用と間接作用)
食物中のペプチドや胃の伸展刺激などにより、幽門前庭部のG細胞からガストリンが血液中に分泌されます。ガストリンは血流に乗って胃底部・体部の壁細胞まで運ばれ、壁細胞表面のCCK-B受容体に結合して胃酸分泌を直接刺激します。ただし、ヒトではこの直接作用よりも、ガストリンが周囲のECL細胞を刺激してヒスタミンを放出させ、そのヒスタミンが壁細胞のH2受容体に結合することで胃酸分泌を促す、間接作用の経路が主要な役割を果たしていると考えられています。まず押さえるべき中心の流れは、G細胞→ガストリン→ECL細胞→ヒスタミン→壁細胞のH2受容体→胃酸分泌、という経路です。これに加えて、ガストリンが壁細胞のCCK-B受容体へ直接作用する経路も別に存在する、という位置づけで理解してください。
促進経路(2) 迷走神経経路
迷走神経の刺激は、迷走神経の末端から壁細胞へ直接伝わるのではなく、胃壁内の神経系(腸管神経系)を介して伝えられます。この経路から放出されるアセチルコリンが壁細胞表面のM3受容体に結合することで、胃酸分泌を促進します。同じ迷走神経刺激は、胃壁内の神経系を介して放出される神経ペプチドのGRP(ガストリン放出ペプチド)によってもG細胞に伝えられ、ガストリンの分泌を促します(迷走神経刺激→胃壁内の神経系→GRP→G細胞→ガストリン分泌)。アセチルコリンが壁細胞のM3受容体に働く経路と、GRPを介してG細胞・ガストリン分泌を促す経路は、伝える物質も最終的に作用する相手の細胞も異なるため、混同しないようにしてください。
抑制経路 ソマトスタチン経路
胃の中の酸性度が強くなりすぎると、幽門前庭部に多く、胃体部を含む胃内にも分布するD細胞がソマトスタチンを分泌します。ソマトスタチンはG細胞からのガストリン分泌を抑え、結果として胃酸分泌を抑える方向へ働きます。これは、胃酸が増えすぎるとそれを感知して分泌を抑える、負のフィードバックの仕組みです。

H⁺/K⁺-ATPaseー胃酸分泌の最終ステップ
ガストリン・ヒスタミン・アセチルコリンによる刺激は、最終的に壁細胞の中にあるH⁺/K⁺-ATPaseという輸送体の働きに集約されます。H⁺/K⁺-ATPaseは壁細胞の胃内腔側の膜に存在し、ATPのエネルギーを使って水素イオン(H⁺)を胃の内側へ送り出し、代わりにカリウムイオン(K⁺)を細胞内へ取り込む能動輸送を行います。これが胃酸分泌の最終段階であり、この酵素の働きを抑える薬がプロトンポンプ阻害薬として使われています(本記事では薬理学の詳細までは扱いません)。
胃粘膜を守るしくみ
胃は強い酸とペプシンにさらされていますが、「胃は強い酸に耐えられる」という一言だけで終わらせず、実際にどう防御しているかを理解しておく必要があります。表層粘液細胞などから分泌される粘液が胃の表面を覆い、その粘液の中に重炭酸イオンが閉じ込められることで、粘膜の表面近くだけを中性に近い状態に保っています(粘液・重炭酸バリア)。これに加えて、豊富な粘膜血流が酸素や重炭酸イオンを供給しつつ、万一傷ついた部分があっても周囲の細胞が速やかに移動して隙間を塞ぐ高い修復力を持っています。分泌(攻撃因子)と防御機構のバランスが崩れると、胃粘膜が傷つきやすくなります。
内因子とビタミンB12
壁細胞は塩酸だけでなく、内因子と呼ばれるタンパク質も分泌します。食物中のビタミンB12は、胃の中ではまず内因子ではなくRタンパク(ハプトコリン)という別のタンパク質と結合しており、十二指腸で膵液中の消化酵素がRタンパクを分解した後、はじめてビタミンB12は内因子と結合します。この内因子・ビタミンB12複合体が回腸末端まで運ばれ、そこにある専用の受容体を通じて吸収されます。
この一連の流れが崩れると、次の順序で貧血につながります。
壁細胞からの内因子分泌が低下→回腸末端でのビタミンB12吸収が低下→ビタミンB12欠乏→DNA合成障害→巨赤芽球性貧血
ここで注意したいのが「悪性貧血」という言葉の指す範囲です。悪性貧血は、壁細胞の障害全般を指す言葉ではなく、自己免疫性胃炎によって壁細胞や内因子に対する自己抗体がつくられ、その結果として内因子分泌が低下するタイプの巨赤芽球性貧血を指します。壁細胞の障害にはほかの原因もあり得るため、「壁細胞が傷つく=すべて悪性貧血」と単純化しないようにしてください。
国試で間違えやすい組合せ
| 組合せ | 整理のポイント |
|---|---|
| 主細胞/ペプシノーゲン | 主細胞が分泌するのは酵素ではなく前駆体 |
| 壁細胞/塩酸・内因子 | 1つの細胞が2種類の異なる物質(イオンとタンパク質)を分泌する |
| G細胞/ガストリン | ガストリンは酵素ではなくホルモン |
| ECL細胞/ヒスタミン | ガストリンの間接作用を仲介する細胞 |
| D細胞/ソマトスタチン | 促進系ではなく抑制系のホルモン |
| H2受容体/ヒスタミン | アレルギーのヒスタミンと同じ物質が胃酸分泌にも関わる |
| M3受容体/アセチルコリン | 迷走神経刺激が胃壁内の神経系を介して壁細胞へ伝わる経路 |
| CCK-B受容体/ガストリン | ガストリンが壁細胞に直接結合する受容体 |
| 胃での分泌/回腸末端での吸収 | 内因子が作られる場所とビタミンB12が吸収される場所は離れている |
確認問題
問1
胃壁と固有筋層の構造に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。
- 胃壁全体が、内斜走筋・輪走筋・縦走筋の3層からなる。
- 胃壁は粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜の4層からなり、このうち固有筋層が内斜走筋・輪走筋・縦走筋の3層構造になっている。
- 胃の固有筋層は、他の消化管と同じく輪走筋・縦走筋の2層のみである。
- 漿膜は胃壁の最も内側に位置する層である。
- 粘膜下層には筋組織が豊富に含まれ、収縮運動の主体となる。
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正解: ② 胃壁は粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜の4層からなり、このうち固有筋層が内斜走筋・輪走筋・縦走筋の3層構造になっている。
正解の理由: 胃壁は基本の4層構造を保ったまま、その中の固有筋層だけが例外的に3層(内側から斜走筋・輪走筋・縦走筋)になっているというのが正しい理解です。
誤答が誤りである理由:
- ① 「胃壁全体が3層」という誤解。3層構造なのは4層のうちの固有筋層のみです。
- ② 正解。
- ③ 胃の固有筋層は例外的に3層であり、一般的な2層構造ではありません。
- ④ 漿膜は最も外側の層で、内側ではありません。
- ⑤ 収縮運動の主体は固有筋層であり、粘膜下層は血管・神経の通路です。
ひっかけのポイント: 「胃壁=3層」と「固有筋層=3層」を入れ替えるひっかけです。
問2
胃粘膜の細胞と分泌物の組合せとして、誤っているものはどれか。1つ選べ。
- 主細胞ーペプシノーゲン
- 壁細胞ー塩酸・内因子
- G細胞ーガストリン
- ECL細胞ーソマトスタチン
- 表層粘液細胞ー粘液
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正解: ④ ECL細胞ーソマトスタチン
正解の理由: ECL細胞が分泌するのはヒスタミンであり、ソマトスタチンを分泌するのはD細胞です。この組合せが誤りです。
誤答が誤りである理由:
- ① 主細胞はペプシノーゲンを分泌するため正しい組合せです。
- ② 壁細胞は塩酸と内因子の両方を分泌するため正しい組合せです。
- ③ G細胞はガストリンを分泌するため正しい組合せです。
- ④ ECL細胞の分泌物はヒスタミンであり、ソマトスタチンではないため誤り(これが正解)。
- ⑤ 表層粘液細胞は粘液を分泌するため正しい組合せです。
ひっかけのポイント: ECL細胞とD細胞の分泌物(ヒスタミンとソマトスタチン)を入れ替えたひっかけです。
問3
胃酸分泌の調節に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。
- ソマトスタチンは壁細胞を直接刺激し、胃酸分泌を促進する。
- ガストリンは壁細胞への直接作用に加え、ECL細胞からのヒスタミン放出を介しても胃酸分泌を促進する。
- アセチルコリンは胃酸分泌を抑制する方向に働く。
- D細胞は胃内の酸性化を感知すると、ガストリン分泌を促進する。
- 胃酸分泌はガストリンのみによって調節されており、神経性の調節経路は存在しない。
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正解: ② ガストリンは壁細胞への直接作用に加え、ECL細胞からのヒスタミン放出を介しても胃酸分泌を促進する。
正解の理由: ガストリンには壁細胞への直接作用と、ECL細胞・ヒスタミンを介した間接作用の2つの経路があり、これが正しい記述です。
誤答が誤りである理由:
- ① ソマトスタチンは抑制系のホルモンであり、促進ではありません。
- ② 正解。
- ③ アセチルコリンはM3受容体を介して胃酸分泌を促進する側です。
- ④ D細胞は酸性化を感知するとガストリン分泌を抑制する方向に働きます(促進ではない)。
- ⑤ 迷走神経(アセチルコリン・GRP)による神経性の調節経路も存在します。
ひっかけのポイント: 促進系と抑制系の働きを入れ替えるひっかけです。
問4
ペプシノーゲンとペプシンに関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。
- ペプシノーゲンは活性型の酵素であり、そのままタンパク質を分解する。
- ペプシンは主細胞から直接分泌される活性型の酵素である。
- ペプシノーゲンは不活性な前駆体であり、胃酸によってペプシンへ活性化される。
- ガストリンはタンパク質分解酵素であり、ペプシンと同じ働きをする。
- 塩酸自体がタンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素である。
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正解: ③ ペプシノーゲンは不活性な前駆体であり、胃酸によってペプシンへ活性化される。
正解の理由: 主細胞が分泌するのは不活性な前駆体であるペプシノーゲンであり、胃酸(酸性環境)によって活性型のペプシンに変化するというのが正しい流れです。
誤答が誤りである理由:
- ① ペプシノーゲンは不活性な前駆体であり、活性型ではありません。
- ② 主細胞が直接分泌するのはペプシノーゲンであり、ペプシンそのものではありません。
- ③ 正解。
- ④ ガストリンは酵素ではなくホルモンです。
- ⑤ 塩酸は酵素ではなく、胃酸というイオン性の物質です。
ひっかけのポイント: 前駆体(ペプシノーゲン)と活性型(ペプシン)、ホルモン(ガストリン)と酵素(ペプシン)を入れ替えるひっかけです。
問5
内因子とビタミンB12の吸収に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。1つ選べ。
- 内因子は主細胞から分泌され、胃の中でビタミンB12の吸収が完結する。
- 内因子は壁細胞から分泌され、ビタミンB12と結合した複合体が回腸末端で吸収される。
- ビタミンB12は胃の中で直ちに内因子と結合し、他のタンパク質と結合することはない。
- 悪性貧血は、原因を問わずすべての壁細胞障害を指す言葉である。
- 内因子分泌が低下しても、ビタミンB12の吸収量には影響しない。
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正解: ② 内因子は壁細胞から分泌され、ビタミンB12と結合した複合体が回腸末端で吸収される。
正解の理由: 内因子は壁細胞から分泌され、ビタミンB12と結合した複合体が回腸末端まで運ばれて吸収されるというのが正しい流れです。
誤答が誤りである理由:
- ① 内因子を分泌するのは主細胞ではなく壁細胞であり、吸収の場は胃ではなく回腸末端です。
- ② 正解。
- ③ ビタミンB12は胃内ではまずRタンパクと結合し、十二指腸でRタンパクが分解された後に内因子と結合します。
- ④ 悪性貧血は、自己免疫性胃炎による内因子分泌低下を指す言葉であり、壁細胞障害全般を指すものではありません。
- ⑤ 内因子分泌が低下すると、回腸末端でのビタミンB12吸収が低下します。
ひっかけのポイント: 分泌する細胞(壁細胞と主細胞)、吸収の場(回腸末端と胃)を入れ替えるひっかけです。
まとめ
胃は、粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜の4層構造を持ち、固有筋層だけが例外的に3層です。胃腺に並ぶ主細胞・壁細胞・G細胞・ECL細胞・D細胞などが、それぞれ異なる分泌物を通じて連携し、ガストリン・ヒスタミン・アセチルコリンによる促進と、ソマトスタチンによる抑制のバランスで胃酸分泌が調節されています。最終的な胃酸分泌はH⁺/K⁺-ATPaseによって担われ、粘液・重炭酸バリアと血流が胃自身を守っています。壁細胞から分泌される内因子は、回腸末端でのビタミンB12吸収に不可欠であり、この経路の障害は巨赤芽球性貧血につながります。「どこから何が分泌され、どこへ作用し、最終的に何が起こるのか」という一連の流れとして押さえておくことが、国試の正誤問題を解く力につながります。回腸末端での吸収の仕組みや、小腸を構成する部位・細胞の詳細については、小腸の構造・絨毛の仕組み・栄養素の消化吸収を確認するで扱っています。胃で消化された内容物は十二指腸で膵液・胆汁とも混ざり合います。胆汁を作る肝臓の構造・血流・胆汁の流れについては、肝臓の構造・門脈・胆汁の流れを確認するで扱っています。 回腸に続く大腸では、消化酵素による分解ではなく水分・電解質の吸収や腸内細菌による短鎖脂肪酸の生成が中心的な役割を担います。大腸の構造・水分吸収・腸内細菌の働きについては、大腸の構造・水分吸収・腸内細菌の働きを確認するで扱っています。
参考文献・出典
- 厚生労働省「管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)改定検討会報告書」(令和4年度改定)大項目10「消化器系」(消化器系の構造と機能が出題範囲に含まれることの根拠として使用)
- Engevik AC, Kaji I, Goldenring JR. “The Physiology of the Gastric Parietal Cell.” Physiological Reviews. 2020;100(2):573–602.(壁細胞による胃酸分泌、H⁺/K⁺-ATPaseによるH⁺とK⁺の交換、ガストリンの壁細胞への直接作用とECL細胞を介したヒスタミン放出、ヒスタミンのH2受容体作用、アセチルコリンのM3受容体作用、ソマトスタチンによる抑制、G細胞が主に幽門前庭部に存在すること、ECL細胞が主に胃体部の酸分泌腺領域に存在すること、D細胞が幽門部だけでなく胃内に広く分布することの根拠として使用)
- OpenStax. “Anatomy and Physiology 2e,” 23.4 The Stomach.(胃の噴門・胃底・胃体・幽門と小弯・大弯、胃壁の基本的な4層と固有筋層に内斜走筋が加わること、胃腺を構成する主細胞・壁細胞・粘液頸部細胞などの存在、主細胞がペプシノーゲンを分泌すること、壁細胞が塩酸と内因子を分泌すること、粘液・重炭酸イオン・上皮細胞間の結合による粘膜防御、内因子がビタミンB12吸収に必要であることの根拠として使用。同資料の記述のうち単純化された表現は、そのまま転載せずPMC論文等と照合した表現に置き換えて使用)

